本園にはツリーハウスや小屋テント、カラフルハウスといった木でできた遊具を始め、子どもたちを取り巻く環境の中で木に親しみ、触れることを大切にしている。木育活動はただ作品を作るのではなく、木の触感や香り、木の特徴を知ったり、普段使わない道具の扱い方を覚えたりと子どもの気づきや学びが多くある。そのため当園では活動への導入や作品完成後の発展した活動など、工程を重視しながら取り組んでいる。 日頃親しんでいるものが行事への関心や自然環境への興味などにつながり、子どもたちが新たな活動に向け主体的に取り組んでいけると考え、「木育」をテーマとして設定した。
(導入)
年中は升づくりを行うにあたり、1月初旬より絵本シアター(絵本をプロジェクターで見る活動)で節分の導入を行った。
鬼退治に使う升はもともと秤であったことを知り、驚いた様子だった。また、自分で作った升で鬼退治をしたいと木育活動に向け意欲が出てきていた。
(準備)
年長は制作の準備として時計に印刷するデザインを絵に描いた。
導入の時間を取ったことで、自身の園生活で楽しかったことや幼稚園で好きな遊びや場所を描く子が多く、より作品への思い入れが深まっていることを感じた。
(制作)
年中は板を組み立て升の形を作った後に自分でくぎを打った。道具を使うときのルールや順番も話をよく聞いて守ろうとする姿が感じられた。端に指をあて丁寧に角を取りながら、「いい香りがする」
「すぐに削れてくる」と五感を使いながら楽しむ様子があった。
年長は、時計の組み立て、カレンダーのキューブの作成と園に飾る時計作りの3回に分け制作を行った。
組み立てでは同じテーブルの友だちと順番に支え合いながらくぎを打つ姿があった。また、お互いのデザインを見ながら「この絵素敵だね」と感想を述べあう子どもたちもおり、子ども同士の関りが発展していく様子が見て取れた。
キューブづくりではなかなか動かないのこぎりに苦戦しながらも、キューブを切り落としやすりをかける作業を行った。自分で切り落とした木材を大切そうに扱い、愛着を持って取り組んでいた。
園時計の作成では周りの人と思い出を振り帰りながらパーツを磨き、木の感触や香りを一緒に楽しんでいた。
年中の升づくりと年長の園時計制作日は両学年とも保護者の方にもお手伝いをお願いし、参加をして頂いた。保護者や担任にその時々に感じた気持ちを伝える子どもも多く、聞き手が十分にいたことで更にいろいろな感想を引き出すことができた。
(発展)
年長は材料の木が樹齢の高い伐採木であることから、木が温暖化の防止にどのような役割を果たしているかをスケッチブックシアターで学んだ。環境への意識を高めるとともに、伐採林で作った作品もまた環境に貢献していることを学んだ。
年中は作った升で節分の豆まきを行った。また、アート活動において材質の檜の香りを表現する活動も行った。後日、作品の鑑賞会では、「優しい匂いがした」「美味しそうな匂い」「鬼が逃げていく匂いがすると思った」など、自分の表現した香りを友だちに伝え合った。
今回の木育活動は、導入から発展までの一連の流れを重視しおこなった。
これにより、子どもたちは次の活動への期待と共に「やってみたい」という意欲も高まり、どの活動に対しても主体的に参加する姿勢を感じ取ることができた。
子どもたちが主体的に活動を行うために、保育者が環境設定を丁寧に行うことの大切さを改めて感じ、今後の活動に生かすことのできる気づきとなった。
伝承遊びとは古くから日本で親しまれて伝わってきた子どもの遊びである。鬼ごっこやコマ・けん玉など、その種類は多岐にわたり、子どもの生活に密接に関わっている。
3歳児の伝承遊びはまだ技術的につたないことから、道具を使う遊びよりもわらべ歌を中心に行うこととした。わらべ歌は単に歌うだけではなく身体を動かす運動的な要素があるとともに、友だちと触れ合うことで愛着関係を育むこともできる。
他者との関わりが芽生える時期に取り入れることで、身体を動かす楽しさや友だちと関わるきっかけを作ることもできると考えた。
当園では週に一回おんがくの時間を設け、専任講師や担任と共に歌や音楽あそびを楽しんでいる。
年間を通じ、カリキュラムの中でわらべ歌を取り入れている。
《今年度のわらべうた(一部)》
・ちゃつぼ
・なべなべそこぬけ
・じゅうごやさんのもちつき
・ひらいたひらいた
・にゅーめんそーめん
・どんどんばし
わらべ歌はルールや歌を覚えてしまえば、いつでもどこでも楽しむことができる。
ルールや歌が浸透しないうちは、消極的になってしまう子どももいたが、慣れてくるにつれ遊びを楽しめるようになり、おんがく以外の遊びの時間にも口ずさんだり、友だち同士で遊んだりする姿が見られるようになった。
また、お気に入りの遊びができると「今日はロンドン橋がやりたい」「おてらのおしょうさんをしようよ」と、おんがくの時間でもリクエストをして子ども同士で楽しむ姿が見られた。
わらべ歌などのうた遊びで楽しむことに慣れてくると、普段の遊びの時間には関わりの少ない子どもが一緒にグループを組んでみたり、全員で手をつないで丸を作る時には「こっちがあいているよ」と声を掛け合うなど、子ども同士の関りが多くなってきた。
入園当初は自分中心の世界だった3歳児が、それぞれの社会を見つけ、関わりを楽しむといった成長を目の当たりにすることができたように感じる。
「伝承遊びの取り組みについて」の研究報告書作成時は、けん玉講師によるパフォーマンスが未開催であったため、こちらに追記とする。